電解質輸液は等張電解質輸液と低張電解質液の2つに大別されます。
等張電解質輸液は
①生理食塩水
②リンゲル液
③乳酸リンゲル液(ハルトマン液)
④酢酸リンゲル液
⑤重炭酸リンゲル液
の5つで、細胞外液補充液と呼ばれます。
よく生理食塩水は解るけど、リンゲル液が解らないという方がいらっしゃいます。
リンゲル液について名前の由来から説明すると
イギリス人医師のシドニー・リンガーが魚の収縮筋細胞と皮膚細胞においてNa Cl K Caの適切な濃度を発見しました。そして、それをもとに輸液を開発しました。これがリンガー液(リンゲル液)です。
さて、リンガーが作ったリンゲル液は当初、見向きもされませんでした。
しかし、1900年以降に第一次世界大戦が勃発し、外傷者が多数出てリンガーの作ったリンゲル液は日の目を見るのでした。
さて、ここまで来ると乳酸リンゲル液(ハルトマン液)も察しがつきますね。
1932年にドイツ人医師のアレクシス・ハルトマンが、リンゲル液を大量に使用すると血中のHCO3が希釈されるため代謝性アシドーシスが生じる事を報告し、これを防止するために乳酸を添加しました。
はい、このハルトマン医師が作った輸液だからハルトマン液です。
投与された乳酸は、細胞内に移動しHCO3に代謝され、HCO3濃度を上昇させるため、これまでリンゲル液で生じていた代謝性アシドーシスを予防できるようになりました。
ちなみに乳酸の代わりに酢酸を入れた酢酸リンゲル液も存在します。乳酸は肝臓と心筋にあるLDHの作用によってHCO3に変換されますが、酢酸は筋肉で代謝されるため肝不全、心不全でも使用できるのです。
次に重炭酸リンゲル液ですが、実は日本生まれ。
昔はリンゲル液にHCO3を入れる事は技術的に不可能でしたが、見事これを可能にしました。
さすが技術大国、日本。
これまでのリンゲル液は代謝を行ってHCO3を得ていましたが、最初から重炭酸(HCO3)を含むので代謝する必要がありません。そのため、代謝が遅延する肝機能低下時やショック時の循環不全といった救急救命領域で、大変有用な物になりました。
さて、おさらいです。
生理食塩水では電解質バランスが崩れるため、Cl K Caを添加したのがリンゲル液。
リンゲル液では代謝性アシドーシスになってしまうため、乳酸を加えたのが乳酸リンゲル液。
乳酸は肝臓と心臓にあるLDHの作用でHCO3を得る必要があるため、肝不全・心不全では使用しにくいので、代わりに全身の筋肉で代謝してHCO3を得ることができる酢酸を入れたのが酢酸リンゲル液。
もう、何も代謝しなくていいように作られたのが重炭酸リンゲル液。
本日は、ここまで。
次回は低張電解質液についてお話します。